解析よもやま話 【第27回:材料の破断と要素サイズ】

Posted 11/02/18

今回は、新たに執筆者に加わったアルテアの風雲児、福岡(名古屋在籍、好きな自社製品はHyperStudy)が執筆を担当します。

MultiScale Designer の担当になってからというもの、材料の破断というものを非常に良く考えるようになりました。そして考えれば考えるほど、要素サイズへの依存性が強いということを理解してきました。今回はそのお話です。

もしかしたら皆さんは、材料特性が要素サイズで変わるなんておかしいと言うかもしれません。また、もしかしたら、そんなの昔から分かってるから、要素サイズ 2mm、5mm、10mm ごとに材料カードを用意しているよ、と言う皆さまもいるかもしれません。実はこれはどちらも正しいのです。ヤング率、ポアソン比、応力とひずみの非線形の関係式、こういったものは、とことん大きさの概念を取り除いてあります。ヤング率は、2倍に引っ張って延ばすのに必要な面積あたりの力、ポアソン比は、縦に引っ張ったときに横に縮む割合を難しい式にしたもの、ひずみとは長さの変化率と言った具合です。ですので、これらは要素サイズで違うなんてことはありません。

一方で、材料の破断となるとどうでしょうか?材料の破断とは FEM 的に言えば、要素を削除する、または XFEM で2つに割るような感じにごにょごにょするということです。たとえば、「塑性ひずみ 0.1 のときにシェル要素を削除する」、という破断の基準が要素サイズに依存するかどうか、論理的に考えて見ましょう。この条件は言い換えれば 「塑性ひずみ 0.1 のときに、要素の面積分の穴を開ける」 ということになります。要素の面積は要素サイズに思いっきり依存してしまってますね。

物理的にも考えて見ましょう(図1)。2mm のシェル要素で塑性ひずみ 0.1 というのは、その辺りは平均的に 0.1 だということですから、細かく見ていくと、もっと高いところもあるわけです。もっともっと細かくしていけばもっともっと高いところが見つかるわけです。大きくしていけば、逆にどんどん応力は小さくなっていきます。同じ塑性ひずみで要素を削除してしまうと、細かい要素サイズではすぐ破断してしまい、大きな要素サイズではなかなか破断しなくなります。もし、材料試験どおりの塑性ひずみで破断させてるのに、なかなか破断しない、またはすぐに破断してしまう、と言う場合はこの疑いがあるでしょう。

 

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図1: メッシュが細かくなっていくと

論より証拠で、実際に RADIOSS で確かめてみましょう。あえて応力集中が起きるように、四角い穴を開けた試験片を引っ張ってみます(図2)。材料はアルミ合金のような特性です(図3)。要素サイズは 3つ用意しました(図4)。

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図2: 四角い穴を開けた試験片の引張り試験(実際は 1/4 モデルで計算してます)

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図3: 材料の応力-ひずみ線図

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図4: 要素サイズの違うモデル

まずは、塑性ひずみ 0.11 くらいで破断という条件を与えてみました(図5)。面白い結果だと思いませんか?破断直前まで、同じ答えになっているので、応力-ひずみの関係の部分は要素サイズに関係していないことが分かる一方で、要素サイズが小さければ小さいほど、少し伸ばしただけで破断してしまうという依存性があることがよく分かります。

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図5: 同じ破断条件を与えた、力 – 伸び線図

破断直前の応力と塑性ひずみの様子も観察しましょう(図6)。要素サイズが小さいほど、応力集中がきついので、降伏も早くすすみ、真っ先に破断してしまうのです。

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図6: 破断直前の応力、塑性ひずみのコンタ

さて、私たちはこのまま泣き寝入りをするしかないのでしょうか?要素サイズ 0.5mm、1mm、2mm、5mm、10mm、20mm と材料カードを作り続けないといけないのでしょうか?幸い、RADIOSS には破断基準を要素サイズごとに補正係数を掛けて調整する機能があります(図7)。勢いあまって HyperStudy で破断のタイミングが同じになるように調整したので、びったんこ合ってます(図8)。

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図7: 要素サイズによる破断塑性ひずみの補正

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図8: 要素サイズ補正をした力 – 伸び線図

最後に私の予想を述べてしめくくりましょう。この補正係数ですが、要素サイズが無限大で無限小、要素サイズが無限小で無限大になると思います。なので、おそらく

y=(1/x)^n
ここで y: 補正係数、x: 要素サイズ比率

という近似式にぴったり当てはまってくるんじゃないかなというのが私の予想です。皆さん、私の予測が正しいかどうか、HyperWorks で研究してみませんか?それでは。

 

Multiscale Designerについて

Multiscale Designer は CFRP、繊維補強コンクリートなど、複数の材料を組み合わせた複合材料の材料特性(ヤング率、熱伝導率など)を算出するツールです。

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Nobuyuki Fukuoka

Written by Nobuyuki Fukuoka

Technical Manager